「時をかける少女」の感想をいまさら書いてみる(CinemaScapeコメント再録)

★★★★☆(5点中4点)ややネタバレあり!
日記のタイトルはまあ言いたかっただけなんですが、実際、前評判が高く予告編もステキだったから、きっとわたしはこの映画を観て号泣しちゃうんだろうな〜と思っていました。でも自分でも意外なほど冷静に見終えてしまって少々肩透かしを食った気分。

とにかく元気…いやいっそガサツとさえ言ってしまえるほどの主人公・真琴のキャラクター造形は、萌えアニメ全盛の今どきに新鮮・爽やかで躍動感がありました。でも肝心の情動が今ひとつ、ぐっとこちらに伝わってこなかった。なんだか油抜きし過ぎてパサついた油揚げみたい…。

それは実は真琴に限ったことではなくて、千昭にしろ功介にしろ、また果穂ちゃんや早川さんもそうで、彼ら彼女らの心の中が全然覗けない。覗けないから、彼らの心がすれ違ったり行き違ってもやきもきできないし、きちんと向き合えたときも歓びが沸き起こらない。真琴、千昭のことが好きならさっきまでなんであんなに避けてたんだ…?千昭、真琴のこと好きなんじゃなかったのか、なんで早川さんに行っちゃうの…?功介、なに考えてるのかさっぱりわからん…。早川さんは、千昭のどんなところが好きなんだろうな…?それらが、わたしには全然わかりませんでした。

それは「声」よりも「画」の方の問題のような気がします。「ああ、今、この人の心を覗いてしまった」という、ドキドキするような画が、今振り返っても思い浮かばないのです。この位の年齢の子達の<惚れた腫れた>をそんなに深刻に重くやるつもりはない、という意図があるのかな、とも思うのですが、それならもう真琴と千昭との関係は「友情」と言い切ってしまった方がこの映画には似つかわしかったのではないか。おそらくは、友情とも恋ともつかぬ心のありようを描きたかったのだと思いますが、それは拾えなかったなあ、わたしには。

夏の空、どこまでも高い夏の空、半袖の制服、ヘッポコ野球、明日からはじまる夏休み、河原から見る夕日、いつもと同じだけれどもう二度と見ることのできない夕日、そんな“あの夏の空気”こそがこの映画の本当の肝なのでしょう。だから、そこに自分の心を乗せてしまえた人こそが、この夏の勝ち組のような気がします。

4点なのにずいぶん辛くなってしまいましたが、好い映画だと思います。このご時世に、万人が楽しめて、共感できて、それでいて嫌味のない、何かの酷いペテンもない、こんな映画は貴重だと思います。だから「好い映画だよ」とは言ってあげたい。でも、この映画はわたしの心を揺さぶって取りついて離れないような、いつも澱のように沈んでいて何かの拍子に心の中をかき乱すような、「わたしの映画」ではない。これは動かしがたい事実で、なんとも寂しい気持ちです。この夏、たくさんの人が興奮に満ちた、あるいは穏やかに満ち足りた笑顔でこの映画を満喫していることそのものは好もしく思っているだけに、負けたのは「時かけ」ではない、わたしの方だ。そんな気分。